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2019年 12月 12日
「八俣の大蛇(ヤマタノオロチ)とは、どんなものだろう?」 「たいそう恐ろしいオロチなのです。その目は赤く熟れたほおずきのように、らんらんと輝いております。 胴は一つですが、頭と尾はそれぞれ八つに分かれ、そのそれぞれの頭にある両の目が 火のように輝くのです。 その恐ろしいオロチの腹は、いつも血でただれて、新しい生贄を探し続けているのです。」 これは、古事記上巻の中に書かれている、スサノウノミコトが見事にヤマタノオロチを退治するシーンの一節。 先日山羊のメリーさんワークショップで島根県を訪れてきました。 ワークショップは盛況に終わりました。 ご参加くださった皆様、出会うことができて、本当に嬉しかったです。 ありがとうございました。 さて、滞在中は夢中で駆け抜けてきたので、たくさんの人々との会話も、じっくり自分に落とし込むことが できなかった部分もあり、自分的に未消化な感覚がありました。 それは、今回のワークショップを企画してくれた、雲南アートスタートの皆さんとの交流会という名の飲み会の時、 普通に神話の話や、神様が身近にいる感覚を持っていること。 私たちには、あまりそのような感覚がないということに、逆にびっくりされたりして。 この感覚の違いはなんなんだろう。 人の心とは、どのように出来上がっていくんだろう。ということにちょっぴり興味が湧いて 日本最古の書物と言われる、古事記をもう一度読み返してみようと思いました。 なんだか大それた話になりそうだけど、答えに行き着くかわからないけど、 古事記に、ヒントが隠されていたらいいな。 雲南市の街の至る所でヤマタノオロチというワードに出会いました。 温泉の案内看板にもオロチの湯。 飲食店のメニューにもオロチスパイス(違ったっけ?)のかかった焼き鳥とか。聞けば島根にはオロチの爪と呼ばれる 唐辛子があり、いろんなスパイス料理に使われているそうな。 これは今回お世話になったチェリバホールの目の前にある、木次駅の窓に描かれていたスサノウとオロチの絵。 空港にもスサノウとオロチの戦いの人形が飾ってあったしね、すごくスサノウノミコトが浸透しているんです。 随分とスサノウ推しだなと思っていたけど、古事記読んだら分かりましたよ!! スサノウノミコトは、姉のアマテラス大御神に高天原を追放されて、出雲の地へとやってきます。 そこはひのかわの上流で、そこで出会った老夫婦の頼みで、オロチを退治することになり、 見事に退治したスサノウは、老夫婦の娘のクシナダ姫を妻にするんです。 きっと出雲神楽も、このオロチ退治が一番の見所なんじゃないのかな。うううー観たかったなあ!! オロチの血は溢れて、肥の川(ひのかわ)を血の河に変えました。 この肥の川こそ、今現在も出雲の地を流れている斐伊川(ひいかわ)です。 私たちが、出雲空港へ降り立った時、迎えに来てくれた女性スタッフが、このことをそういえば教えてくれたんだっけ。 その時は、神話が身についてるなあーということに感心するばかりで、真の意味を理解してなかったのかも。 空港に降り立った時に、いつも自分達の暮らしている場所とは何か違う空気は確かに感じていたの。 雲の隙間から降りそそぐ光が、何だか神々しいと思ってたら、 「あちらは、出雲大社のあるあたりです」と言われて、正体不明の感動を覚えたんだけど、 雲が出ずると書いて出雲。 雲の表情が、本当に違うような気がする。 古事記を読みながら、あっ!!斐伊川って、あの時通ったよ!!見た見たー!!あの川が、オロチの血で真っ赤になったのか!! なんて思いながら読み進めていくと、 オロチを退治したスサノウは、自身の住まう神殿を、出雲の地に建てることにします。 オロチの血を飲んで、真っ赤だった肥の川(ひのかわ)も、静かな色を取り戻し、豊かで穏やかな山の麓にやってきたスサノウは、 「私はこの地へ来てすがすがしくなった。」 といい、そのことから、その地の名前を須賀と呼ぶんですって。 それは、今の島根県雲南市大東町須賀のあたりだそう。 もう、なんだか夢とうつつがないまぜになって、今と昔が繋がってきた。 この感覚が、もしかしたら、今回出会った皆さんには、普通に内包されている感覚なのかしら? そう、だからスサノウノミコト推しだったのね。 もう、じゅーぶんに理解いたしましたよ。 なんとなく、いつも神様がそばにいるという感覚も、少しわかってきたような気がする。 余談だけど、天皇が皇位につくときのしるしとされてきた三種の神器。 その一つとされる草薙の剣って、スサノウノミコトがヤマタノオロチを退治した際、 オロチの体の中からでできた剣が、草薙の剣とされています。 そしてこれも全くの余談だけど、出雲には、黄泉の国の入り口と言われている場所もあります。 黄泉の国とは、死んだ者がいくと考えられていた所ね。 神話では、死んでしまった妻のイザナミに会いに、夫のイザナキが訪ねて行くんだけど その入り口が、出雲市にある猪目洞窟という場所と言われているそう。 自分の住んでいる土地に、実際に神話に出てくる場所が普通に存在しているとしたら、 これは、自分の世界観に現在進行形で棲みつくんだろうな。 古代の出来事ではなく、今も一緒に生きているんだろうな。 私だったら絶対そうなる。 それが、自分を支えてくれる信仰のようなものになっていく気がする。 だからなのかはわからないけど、お会いした皆さん、すごく落ち着いているというか、整っているというか、 心が澄んでいるという印象を受けた。 一緒にいて、とても気持ちが落ち着いた。 毎日夜はいろんな店に連れて行ってくれて、そのすべての時間が楽しかったです。 そして、最後の日は、飛行機に飛び乗る前のわずかな時間を使い、出雲大社に連れて行ってくれました。 朝、ホテルまでお迎えに来てくれ、車に乗り込むと、 「では、まずは稲佐の浜に行きます!!」 と言われ、海?なぜに? これには確固とした理由がありました。 しかしこの日はあいにくの雨。しかも大雨。 海に着くもやはり大雨は変わらず。 じゃん。 これが稲佐の浜。陰鬱な空。霊力の塊のようなこの弁天島と相まって、異様な迫力で私たちをお出迎え。 「これぞ山陰って感じですね。でも、雨の日も嫌いじゃないんですよねー」って。 ポジティブー。 「じゃあナッキーさん、ほら、この袋に砂を入れて!」 「は、はい。」 ずぶ濡れの砂をひとかき、袋に入れると 「では、この砂を持って出雲大社に向かいますよー」 この稲佐の浜は、神事の儀式で大事な場所。 折しも私たちが訪ねた頃は11月の末。 旧暦の10月を神無月(かんなづき)と言いますが、出雲にはその時八百万の神が全国から集まるので 神在月(かみありづき)と呼び、神をお出迎えする儀式があるようで、 海の道を通って、神々が出雲の地へ到着するとされる場所こそが、この稲佐の浜なんですって。 その大盛り上がりの時が11月の中旬くらいなのかな。 私たちは11月の末をまたいで12月2日に帰ったから、すっかりがらんとしていました。 そういう場所なので、この砂を持って出雲大社に行き、大社の中にある社にその砂を奉納して、 その場所にすでにある砂を自分の家に持ち帰って地面にまくと、ご利益があるっていう事だったのです。 大雨、強風の中決行する人々。 やはり人はまばら。 この時、私の穴の空いたブーツの中に水が侵入。 徐々に足が水浸しになっていくのだが、そんな事は誰も知らない。 ひっそりとありました。どんより空の下、イチョウの黄色がコントラスト効いてて綺麗だった〜。 例の砂を納める場所は、この社の裏手に。 このように、木箱の中に持ってきた砂を入れ、また砂を入れて持って帰るっていう作業。 これがよく写真で見る、ザ、出雲大社です。 すごかったですー。 この時の私の足は、最高潮にグッチョリさん。 実はすごくテンション下がっていた。 もっとこのビックしめ縄に集中して感動したかったのに!!! この他にも八百万の神が出雲大社に集まった時に寝泊まりする、神様のホテルなんてものもありました。 私たちが見た時は扉が閉まっていたけど、神在月の時は、その扉が開き、中を覗けるんだって。 見ても何もないみたいだけど、お布団とか敷いてあったらいいのにね。 もうね、濃厚な4日間でした。 ディープすぎて、書くことがまたまだあるんですよ。 知らないことにたくさん出会えて、消化するのに、時間がかかりそう。 またこの地に帰ってくる日は来るのかな。 今回のワークショップを企画してくださった、雲南アートスタートのメンバーの方々。 ワークショップが終わった時に、みんなで今回を振り返る時間を取ってくださったのですが、 鋭いことをいろいろ言ってくれました。 中でも嬉しかったのは、メリーさんのデモンストレーションをアクティブに動くために、どれほどの繊細な 準備の積み重ねがあるのかと言うことに着目してくれたこと。 一つ一つのハサミを研ぎ澄ましておくこと、針金一本一本に糸を巻いておくこと、樹脂ねんどと軽量粘土をブレンドして、 一番良い硬さに練っておくこと。布も全部自分たちで染めています。 このワークショップは、実はとても準備に時間がかかるのです。 そんなことは何も口にはしませんが、ちゃんと見てくれてたんだなと思うと、報われます。 ある人はこんなことも言っていました。 参加者の生み出す作品たちが、みんな自分自身に似ていて、自分そのものを生み出していると。 たった二時間しか参加者と触れ合っていないのに、それがわかっちゃうんだ。すごいな。 素敵な感性の持ち主の雲南アートスタートの皆さんと、 また何か面白い企画で一緒にやれたら、もっといい時間になるんじゃないかなと思いました。 思い出いっぱいの島根。 お腹いっぱいになって帰ってきました。 ただいま山梨。 早速玄関に置いてみたよ。例の砂。 おまんじゅうみたいにこんもり盛ってしまったけど、なんか間違ってるかな? とりあえず、風が運んで行ってくれるのを待っているところです。 では、また会いましょう!!!! ナッキーでした
by nakamuratadashi
| 2019-12-12 16:14
| 日々のこと
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